Eljudnir ~エルヴィドネル
徒然なるままに、日暮らし、PCに向かひて、心に移りゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。
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見た夢ノベライズ。私の願望と恐怖を具現化したかのようなおとぎ話。ちょっと人魚姫に似ているかもしれない?
最初泣きました。あとから思い出しても泣けます。悲し過ぎる。
…うっ、ダメだ。書いていても泣ける。
あるところに若い男女がおりました。彼らは町の外れの小さな家で、一緒に暮らしておりました。
陽が登ると彼女は起き出し、パンを焼きます。二人で朝食を食べたあと、二人はそれぞれの仕事をします。
彼はお弁当と釣竿を持って川へ。彼女は庭のジャガイモを掘ったり、トマトに水をやったり。
そして陽が傾きかけた頃、「今日は大きな魚が釣れたよ」と言いながら彼が帰ってくると、暖炉で煮て二人で食べました。
夜になると、彼が本を読むかたわらで、彼女は編物を編んで過ごしました。
彼らは何をするにも一緒でした。そんな小さな幸せの毎日でした。
ある日、神様が気まぐれを起こしました。世界の人々に奇跡の力を分け与えたのです。
人々は、どんな願いでもたった一つだけ、叶えることが出来るようになりました。それは一生にたった一度、突然に宿る力でした。
ある人は、大きな家を持ちました。
ある人は、世界一周旅行へ旅立ちました。
ある人は、巨万の富を得ました。
ある人は、見えない目が治りました。
ある人は、親の仇を呪い殺しました。
ある人は、傷がすぐ治る体を授かりました。
ある人は、永遠に近い命をもらいました。
他の誰かが願い事を叶えるたび、人々は言いました。「本当にどんな願いも叶う! この力は、よく考えて使わなきゃ」
順番がまだの人は、叶える力を持っていません。しかし、死ぬまでのうちにいつかは、この力がもらえると約束されていました。
そしてとうとう、彼らに願い事の順番がやってきました。まずは彼女が力を得たのです。
喜ぶ彼女に、彼は言いました。
「僕は充分幸せだから、願い事はないんだよ。君が好きなことを祈ってごらん」
彼女は頷いて言いました。
「私、もう願い事は決めてあるの」
彼女は彼の手を握ってゆっくりと瞳を閉じ、願い事を口にしました。
『彼と、ずっと一緒にいられますように』
すると、どうしたことでしょう。彼の体が光り、薄く透けていきます。握っていた手がなくなった瞬間、彼女は驚いて目を開けました。
「どうしたの!? 消えないで!」
彼はどんどん薄くなり、最後には消えていなくなってしまいました。彼女は分けが分からずしばらく呆然とした後、泣き崩れました。
彼は、彼女とずっと一緒にいるための、不滅の魂となったのでした。しかし、魂だけの存在になってしまったため、彼女からは見ることも触ることも出来なくなってしまったのです。
それでも、彼は彼女のそばにおりました。
彼女は、毎日を泣いて暮らしました。
なんでいなくなってしまったのだろう。願い事の何がいけなかったのだろう。私も幸せだったのに、なんであんなことを願ってしまったのだろう。
彼女の後悔は尽きません。
彼は彼女をなぐさめたくて、僕はここにいるよと伝えたくて、そっと近寄りました。ふと、彼女が泣き濡れた顔を上げました。
「誰かいるの? あなた?」
気配だけを、彼女は感じたのです。そして小さな二人の家の中を探してまわるけれど、彼はもちろんのことネズミも虫もいませんでした。
そんなことがたびたび続くと、彼女はやがて気配を恐れるようになりました。
「家の中に何かがいる! 助けて、一緒にいて、あなた」
怖がる彼女をなぐさめようと彼が近付くと、彼女は一層怖がります。
「怖いよう、怖いよう。あなた、助けて。あなた」
彼女が彼を求めて泣くたび、彼はそれを助けてあげられないことがとても悲しくて悲しくて、それでも彼女を一人には出来ずにそばを離れられませんでした。
そんなある日、突然彼は感じました。自分に願いを叶える力が宿ったことを。
彼は迷わず、一つの願い事を祈りました。
『彼女が悲しまないように、彼女に笑顔が戻るように、僕のことを忘れさせてください』
ベッドの中で布団をかぶり泣いていた彼女が、安らかな寝息を立て始めたのを、彼は聞きました。
彼女は彼の事を忘れました。二人の小さな家は、彼女の家になりました。
陽が登ると彼女は起き出し、パンを一人で食べます。それから庭のジャガイモを掘ったり、トマトに水をやったりします。
そして陽が真上を通り過ぎると、魚や肉を買うために、たくさん編んであった毛糸の小物やカゴを持って町へ売りに行きます。
そのうち彼女は、何度も編物を買ってくれた青年に、相談事を打ち明けました。
「家の中で、たまにおかしな気配がするの。怖くて、怖くて」
青年は彼女を心配して、家まで来てくれました。
魂になった彼は、彼女が青年と楽しそうにしているのを見ると、ちょっと悲しそうに、それでも良かったと思って、彼女の幸せを邪魔しないように身を潜めました。
彼女は、青年と一緒にいると、おかしな気配がしないことに気付きました。
それから彼女は、青年と幸せに暮らしました。
彼は、今でも庭から、ひっそりと彼女の笑顔を見守っています。
最初泣きました。あとから思い出しても泣けます。悲し過ぎる。
…うっ、ダメだ。書いていても泣ける。
陽が登ると彼女は起き出し、パンを焼きます。二人で朝食を食べたあと、二人はそれぞれの仕事をします。
彼はお弁当と釣竿を持って川へ。彼女は庭のジャガイモを掘ったり、トマトに水をやったり。
そして陽が傾きかけた頃、「今日は大きな魚が釣れたよ」と言いながら彼が帰ってくると、暖炉で煮て二人で食べました。
夜になると、彼が本を読むかたわらで、彼女は編物を編んで過ごしました。
彼らは何をするにも一緒でした。そんな小さな幸せの毎日でした。
ある日、神様が気まぐれを起こしました。世界の人々に奇跡の力を分け与えたのです。
人々は、どんな願いでもたった一つだけ、叶えることが出来るようになりました。それは一生にたった一度、突然に宿る力でした。
ある人は、大きな家を持ちました。
ある人は、世界一周旅行へ旅立ちました。
ある人は、巨万の富を得ました。
ある人は、見えない目が治りました。
ある人は、親の仇を呪い殺しました。
ある人は、傷がすぐ治る体を授かりました。
ある人は、永遠に近い命をもらいました。
他の誰かが願い事を叶えるたび、人々は言いました。「本当にどんな願いも叶う! この力は、よく考えて使わなきゃ」
順番がまだの人は、叶える力を持っていません。しかし、死ぬまでのうちにいつかは、この力がもらえると約束されていました。
そしてとうとう、彼らに願い事の順番がやってきました。まずは彼女が力を得たのです。
喜ぶ彼女に、彼は言いました。
「僕は充分幸せだから、願い事はないんだよ。君が好きなことを祈ってごらん」
彼女は頷いて言いました。
「私、もう願い事は決めてあるの」
彼女は彼の手を握ってゆっくりと瞳を閉じ、願い事を口にしました。
『彼と、ずっと一緒にいられますように』
すると、どうしたことでしょう。彼の体が光り、薄く透けていきます。握っていた手がなくなった瞬間、彼女は驚いて目を開けました。
「どうしたの!? 消えないで!」
彼はどんどん薄くなり、最後には消えていなくなってしまいました。彼女は分けが分からずしばらく呆然とした後、泣き崩れました。
彼は、彼女とずっと一緒にいるための、不滅の魂となったのでした。しかし、魂だけの存在になってしまったため、彼女からは見ることも触ることも出来なくなってしまったのです。
それでも、彼は彼女のそばにおりました。
彼女は、毎日を泣いて暮らしました。
なんでいなくなってしまったのだろう。願い事の何がいけなかったのだろう。私も幸せだったのに、なんであんなことを願ってしまったのだろう。
彼女の後悔は尽きません。
彼は彼女をなぐさめたくて、僕はここにいるよと伝えたくて、そっと近寄りました。ふと、彼女が泣き濡れた顔を上げました。
「誰かいるの? あなた?」
気配だけを、彼女は感じたのです。そして小さな二人の家の中を探してまわるけれど、彼はもちろんのことネズミも虫もいませんでした。
そんなことがたびたび続くと、彼女はやがて気配を恐れるようになりました。
「家の中に何かがいる! 助けて、一緒にいて、あなた」
怖がる彼女をなぐさめようと彼が近付くと、彼女は一層怖がります。
「怖いよう、怖いよう。あなた、助けて。あなた」
彼女が彼を求めて泣くたび、彼はそれを助けてあげられないことがとても悲しくて悲しくて、それでも彼女を一人には出来ずにそばを離れられませんでした。
そんなある日、突然彼は感じました。自分に願いを叶える力が宿ったことを。
彼は迷わず、一つの願い事を祈りました。
『彼女が悲しまないように、彼女に笑顔が戻るように、僕のことを忘れさせてください』
ベッドの中で布団をかぶり泣いていた彼女が、安らかな寝息を立て始めたのを、彼は聞きました。
彼女は彼の事を忘れました。二人の小さな家は、彼女の家になりました。
陽が登ると彼女は起き出し、パンを一人で食べます。それから庭のジャガイモを掘ったり、トマトに水をやったりします。
そして陽が真上を通り過ぎると、魚や肉を買うために、たくさん編んであった毛糸の小物やカゴを持って町へ売りに行きます。
そのうち彼女は、何度も編物を買ってくれた青年に、相談事を打ち明けました。
「家の中で、たまにおかしな気配がするの。怖くて、怖くて」
青年は彼女を心配して、家まで来てくれました。
魂になった彼は、彼女が青年と楽しそうにしているのを見ると、ちょっと悲しそうに、それでも良かったと思って、彼女の幸せを邪魔しないように身を潜めました。
彼女は、青年と一緒にいると、おかしな気配がしないことに気付きました。
それから彼女は、青年と幸せに暮らしました。
彼は、今でも庭から、ひっそりと彼女の笑顔を見守っています。
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