黒い悪魔 よしなしごと

　それは一昨日のことでした…。夜、食器洗いをしようと電気の点いていない台所へ向かうと、白いキッチンマットに黒い楕円形が見えました。しかし暗かったのでよく見えず、特に気にも留めずに手に持っていたゴミをゴミ箱へ捨てました。
　そして再び前を向くと、キッチンマットに黒い楕円はありません。嫌な予感…。でも、ここを借りて早9ヶ月、一度も「ヤツ」の姿を見たことはないのです。そうだよ、見たことないんだよ！　いないんだよ！！
　と、心に言い聞かせ、電気を点けてみる。キッチンマットの上をじーっと見る。うん、いない。
　次、しゃがんでみる。キッチンマットから移動出来そうな範囲に黒い楕円はないか。

　……いるしーーーー！！！（泣）

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　紛うことなき、ヤツは黒い悪魔！　いぃーやぁーーー！　とうとう、とうとう我が地にやってきたか！
　彼ら、窓が開いてると飛来したり、余裕で隙間から入ってきたりするんですよね…。いる・いないって運だと思うんですよねアレ。

　とにかく旦那を呼ぶ。しかし、旦那も虫苦手。二人で新聞丸めた棒の先にガムテープを逆向きに巻いて構える。叩き潰す根性もないヒトたち。
　そして死闘は始まった。しかしほどなく、バコバコ打ち下ろす内にお互いの新聞棒の先がくっついて「離れなーい！」とコントを繰り広げるバカ夫婦。そんな軟弱者である私たちなど歯牙にもかけず、ヤツはひょいひょいとタンスの裏に入っていきました…。あぁ逃がしちゃった。

　よくよく考えてみれば、私たちは嫌なだけでヤツがいたからと言って死ぬわけじゃないですが、彼らは今まさに殺されようとしているのを逃げているわけだから、そりゃ必死ですよね。うん。
　しかし情けをかけている場合ではないのだ！　だって嫌なものは嫌だ。うん。
　というわけで翌日、私はゴキジェットを購入。家に完備。

　リターン・マッチは思いの他早くやってきました。その夜、また台所にいたのです。犯人は、必ず犯行現場に帰ってくる！　何か違う！
　しかし、オタマなどがある付近をウロついているため、伝家の宝刀ゴキジェットが使えません。あぁーいやーとマゴつく私。すると、ヤツはサランラップの箱に登りました。チャンス！？
　旦那がラップの箱を持ち、恐る恐る持ち上げる。その間に私が急いでビニール袋を用意。あとはラップ箱を突っ込めば The End …のはずが。
　さすがに生命の危険には敏感らしく、すごい勢いでラップ箱を旦那の手の方へ駆け上がりました。たまらずラップ箱を手放す旦那。二人で「あぁ～あ～」とか情けない声を出している間に、ヤツはまたしてもひょいひょいと冷蔵庫の裏へ。
　…また逃がしちゃった（泣）。

　未だ、ヤツは捕まっていません。まだこの家のどこかで、その黒い体を横たえているのです…。いぃーーやぁーーー。