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Eljudnir ~エルヴィドネル

徒然なるままに、日暮らし、PCに向かひて、心に移りゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。
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 久々に記憶に残る夢を見ました。というのも先晩眠れなくて、寝入りに覚醒・半覚醒を繰り返していたせいでしょう。

 見た夢ノベライズ第1弾は、こんな暗い作品になってしまった。
 ホラー色あり、気持ち悪いのダメな人は読まないことをお勧めします。…まぁそんな表現力あるわけじゃないから、大丈夫だろうけど(笑)。

 私は長柄のブラシで床を磨いていた。部屋の中は暗い。コンクリートがむき出しの床は汚れた水でぬめっており、右手にある排水管から今も汚水が流れ出している。
 一心不乱に床を磨く。いや、水が溜まらないように排水溝からゴミをどけているのだ。
 私が立っているコンクリートの床には弧を描いた溝が掘られている。私の背後の壁のやや右、膝裏の位置に排水口があり、そこから出た汚水は溝を通って左の方へ流れている。左には溝の終端がやや広く円形に掘られており、その中心にある穴には網が張られていた。
 今も、その網へ、流れてきた長い髪の束が引っ掛かる。途端に水は滞り、今にも汚水が溝から溢れそうになる。私はブラシで網をこする。髪がどけられ、粘度の感じられる水が渦を巻いて流れていく。ごぼごぼと泡が立ち、それが破裂するたびに異臭が漂ってくるように思われる。ブラシには髪だけではなく、髪についていた汚いヘドロのようなものもべっとりと付いてしまった。休む間もなく、また大きな何かの塊が流れてきた。水が溜まり始める。急いでブラシを動かす。流れる。
 私は焦っていた。溝から汚水があふれると、コンクリートの床まで汚水に浸されてしまう。このぬめぬめした床に裸足で立っている私は、それがひどく嫌だった。


 正面の壁は暖炉のように見えた。中心の下に穴が開いており、その回りを煉瓦が囲んでいる。暖炉は冷え切っていた。黒く崩れた炭のようなものが、穴の中でわだかまっている。煉瓦も決して赤くはなく、煤で薄汚れてこの部屋の灰色と一体化していた。
 この部屋では色もなく、すべてが灰色のように見えた。右上には窓もあったが、外は灰色の曇天だ。とはいえ、もし晴れていたとしても光が射しそうにないくらい、窓ガラスは汚れて薄黒かった。


 ふと気付くと、隣に人が居た。彼女もブラシを持って網をこすっている。排水口と溝、網のついた穴が、私のこすっているこちらとは左右対称に左から流れ、部屋の中央の円形に溜まっていた。私のこする網のある円形溝と、彼女のこする網のある円形溝は隣り合っていた。
 足の裏の湿ったコンクリートが冷たい。
「見て」
 彼女が言った。私は網を気にしながらも、顔をわずかにそちらへ向ける。彼女はロングヘアの金髪をツインテールに束ねた、メイド姿の少女だった。
「あそこに死体があるのよ」
 少女は自分の長柄ブラシの先から目を離さない。私も手だけは動かしながら、少女を越えた向こうへ視線をやった。
 それまで気付かなかったが、部屋の左側には壁がなく、次の部屋に続いていた。次の部屋といっても、床のコンクリートは続いており、扉や仕切りもない。中心にかまどを横に広げたようなものが、ぽっかりと口を開けている。中からはヘドロのようなコールタールのような、黒くてぬらぬらしたものが溢れそうにせり出していた。
 死体があると少女が言っている場所がそのヘドロの中だろうと、何故か私は悟った。とても禍々しいものを感じる。少女の言葉をまるきり信じたわけではないが、「ある」と言われると確かにそのヘドロは、人の形に盛り上がっているようにも見えた。
 じっと見ていると、ヘドロが反射する鈍い光が、うごめくように変化していく。
 不意に、コンクリートのぬめりを落としたい欲求に駆られた。溝の中へ突っ込んでいたブラシを持ち上げると、どろどろずるずると髪やヘドロがまとわりついて一緒に引き出される。右後の排水口から流れ出しているまだましな汚水でそれをすすぐと、私はブラシをコンクリートの上へ上げ、そこを磨き始めた。


 一心不乱に床を磨く。こんなブラシでもこすれば、床のぬるりとした感触がなくなっていくようだ。私は夢中になった。そして気付くと、死体があるというヘドロの前に来ていた。
 金髪の少女が網をブラシでこする音が、背後から聞こえてくる。異質なヘドロは一部がコンクリートの上へはみ出していた。ブラシの先でぐいとそれを押すと、わずかな抵抗感の後にどぷ、とブラシがヘドロの中へ突き入った。
 背筋が凍った。この中には死体がある。ブラシを引き出そうとしたけれど、ただのヘドロとは思えぬ粘質なその物体は私のブラシを取り込んで離さない。あまつさえ、それは底無し沼のように私のブラシをぐいぐいと引き始めた。
 何故か、私はブラシを離せなかった。そのまま手を引かれ、抵抗しようと足を踏ん張ったがその足ごと引きずられる。足首がヘドロに埋没した。パニックになった。金属ではない、何か硬いものが足にあたった。
 総毛立つ。これが死体なんだ。
 私はじたばたと暴れたが、すでに足の自由は奪われていた。もがく私は手近にあったものを掴んだ。金色の一房。それを頼りに抜け出そうとぐいと引っ張ったら、声も上げずに少女が倒れた。
 少女は「嫌だ」というようなことを言っていたような気がする。


 私はコンクリートに横たわっていた。
 体は動かない。石膏でかためられたミイラのように、きっちりとした姿勢で固まっていた。
 横たわっているのは、さきほどのヘドロのある部屋だった。
 背中からコンクリートの冷たさは感じない。
 私の体はこの床よりも硬かった。眼球だけが動かせる。ぎょろぎょろと周囲を見回すと、左の方に明かりが見えた。
 そこは茶の間だった。
 背を丸めた老婆が丸い卓袱台の前に座り、古ぼけたテレビを見ている。


 私は死体であり、少女であり、ヘドロであった。


 ふらふらと徘徊していたそこは、パステルカラーの世界だった。
 壁が色とりどりのサイコロクッションで出来ている。その前におもちゃやお菓子が並べられ、そこは本当におとぎの国だった。
 世界は長い回廊になっている。幅が狭く少し先でゆるやかにカーブしていたため、私からは奥が見えなかった。
 周りには水色のスモックを着た園児が大勢歩いている。おもちゃやお菓子には目もくれず、しかしキョロキョロしながら、引率の先生らしき若い女性に従って前へと進んでいた。
 誰も、私に目もくれない。不意に幼い子供が可愛く、愛おしく思えて、近くを歩いていた男の子を抱き締めた。
 男の子は嫌がる風でもなかったが、私を見もしなかった。ただ、前へと誘導する先生の方を見つめ、前へ前へと進もうと、その意味だけでもがいていた。
 己の視界に入った私の腕は、真っ黒でべたついたヘドロだった。


 唐突に私は理解した。
 彼らは生命の象徴で、そして私は死の象徴であると。
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